■エッセイ

 

本格的にプレイバックシアターの世界に飛び込んで、今年で早や15年になる。親であり、妻であり、企業人であり…といろいろな役割と並行して、プレイバックシアターだけはライフワークとして一貫して取り組んできた。 私の長いプレイバック人生の中で感じた『よしなし事』を「エッセイ」として綴り、多くの方々に分かち合えたらと思う。仲間たちと共に歩んできたプレイバックシアターの歴史を紐解きながら、折にふれてお届けしたいと思っている。長谷川 里美(さっと)

●vol.1『 Thanks for new meeting ~ 新しい出会いに感謝して ~』

プレイバックシアターを始めてから、いったい何人もの人と出会ってきたんだろう?全国津々浦々…の、私と同世代はもちろんのこと、多くの「人生」の先輩からフレッシュな若者まで、「家と会社の往復」のような淡々とした日常生活を送っているだけでは到底出会えないであろうみなさんだ。それもプレイバックシアターの「場」で知り合うと、初対面だった人たちもほんの数時間共に過ごしただけで、「何年も前からの友人」であるかのような錯覚に陥ることがよくある。「心」と「心」でつながれる…、本当に不思議な感覚だ。

 

プレイバックシアターの「場」で語られ、再現される「ストーリー」は、語り手が主役であり、語り手の眼を通した「真実」に重きをおいている。その内容は、子供の頃の遠い記憶から現況に至るまで、さまざまな時代に味わった喜怒哀楽…、時には「トラウマ」として抱えている辛く悲しい過去の出来事などなど本当にさまざまだ。 語られるストーリーに耳を傾け、演じあっていると、自分の中にもさまざまな感情が揺れ動いているのに気づく。あるストーリーに共感し、時にはそのストーリーから学び、共に涙しているうちに、人としての「つながり」が少しずつ結ばれていくように感じられる。「自分だけではない」みんな同じように怒り、悲しみ、さまざまな想いを抱えて生きているんだ…と。そんな気づきは、疲れた心を優しく包み込んでくれるだけではなく、元気とパワーをももたらせてくれる。こうして「場の一体感」が生まれ、それを感じとることができる。そんな深い時間と空間の中で育まれた人間関係は、たとえ日常に戻ったとしても、大切な心の支えとなってくれるに違いない。

 

プレイバックシアターは、そんな数え切れないほどの素敵な出会いを私にもたらせてくれた。「志」同じくするすばらしい仲間たちを私に結び付けてくれた。私の「人生」に潤いを与え、豊かなものに変えてくれた「プレイバックシアター」にとても感謝している。さらなるプレイバックシアターの活動を通じて、これからの未来に出会うであろう多くの人たちに思いを馳せると、今からワクワクするのである。

 

●vol.2 『プレイバックシアターが私にもたらせてくれたもの』  

母であり、妻であり、娘でもあり、そして企業人でもあったり…。シチュエーションによってさまざまな「顔」を使い分けている私は、どこかいつもせわしなく、心に余裕のない毎日を過ごしている。ともすると、忙しさを理由に自分自身を振り返ることもなく、とにかく走り続けてしまう。そして首が回らないほどに行き詰ってしまって始めて、私の「心の器」の中は、気持ちの疲れや心の垢などドロドロした何かで満たされていることに気がつくのだ。これが身体的な疲れなら、温泉へ行ったり、患部をマッサージしてもらうことで、癒されることもあるだろう。心がどうにもならないほどに疲れた時、みなさんはどんな対処をしているのだろうか?  

 

私自身は、「プレイバックシアター」にとても助けられていると思う。プレイバックシアターの場で、テラー(語り手)として、私を追い詰めている何かについてありのままを語る。役者たちが即興で演じてくれる「私が主人公の再現ドラマ」を第三者的な視点で観て、感じるのだ。そうすることで、私自身を取り巻いている漠然とした状況が、まず整理されていく。複雑に絡み合っている要因をひとつひとつ紐解きつつ、掘り下げていく。そして、核心まで到達したとき、心の琴線にふれるのだ。それは、永らく濃い霧で覆われていた心の模様がスッーと晴れていく瞬間でもある。時には涙が自然と頬をつたわり、流れ落ちることもある。そのピュアな涙はモヤモヤしたものすべてを洗い流してくれる。こうして、次へのステップに目を向け、スタートラインに立つことができるのだ。私は何度もこんな体験をしてきた。

 

「人生いろいろ」とは、よく言ったもので、生きていれば良いも悪いもいろいろなことが起こるもの…。10年間の「プレイバックシアター」の活動を通じて、自分自身に襲い掛かるさまざまな風雪に、竹のようにしなりながらも、芯は一本通って折れないという「しなやかな強さ」をもらったような気がする。そして、暴風雨にも負けないエネルギーをもたらせてくれた。

だからこそ、仲間とともに「プレイバックシアター」を大切に伝えていきたい…☆ 

 

●vol.3『 涙活のススメ』

最近、韓流ドラマはまっている…。中でも、ラブストーリーにでてくる登場人物は、とにかくよく泣く。国民性の違いもあるのだろうが、感情表現がとても豊かである。ハラハラ…と大粒の涙が自然と頬をつたわる瞬間のその表情は、万国共通で美しい。

深い悲しみや怒りからくる涙、感極まって流れる感動の涙、何かで凍りついた心が溶けてゆき目頭が熱くなったかと思うと自然と流れ落ちる一粒の涙、最大級の喜びや達成感などからくる歓喜の涙などなど、さまざまなシーンで泣いている。

 

私自身がこれまで歩んできた人生の中で多くの涙を流してきたのはどんな場面なのか…と考えると、プレイバックシアターの

テラー席に座り自分の「ストーリー」を演じてもらっている、そんなシーンが頭に浮かんできた。

第三者的な感覚で自分自身を振り返り、「You are OK!」とその場にいる誰もから受け止めてもらえたと感じられる…

そんな瞬間の涙だ。涙の数だけ、私の人生を豊かにしてくれる。  

 

プレイバックシアターのコンダクターをさせていただくようになって、10年近くなる。一体何人ものテラー(語り手)が、コンダクターである私の横で自然体の涙を見せてくださったことだろうか?それぞれに長らく抱えてきた重荷を降ろし、心がスッと軽くなる…、そんな瞬間に数多く立ち会わせていただいた。思いがけなく涙を流したテラーは、腫れ物が落ちたような穏やかな表情に変わり、さわやかな笑顔さえ見せてテラー席を立っていくのだ。私自身も子供のころから抱えてきたトラウマをテラー席で語ることで克服できたという経験もあり、一人でも多くの人たちにこのような体験をしていただけたら…という想いが、私のプレイバックシアターを続けていく原動力となっている。  

 

最近注目されている『涙活』とは、涙を流すことで心のデトックスを図る活動ということらしい。意識的に泣くことでストレス解消にもつながるそうだ。この『涙活』にもつながるプレイバックシアター。より多くの人たちに知ってもらい、安心して深い体験談を語っていただけるような場を提供し続けていきたい。